9回同点、延長サヨナラ劇
逆境でも屈しないチーム
東海大菅生が西東京大会決勝で佼成学園を延長10回サヨナラで制して西東京の頂点に立った。
2020年9月号掲載
■崖っぷちからの生還
崖っぷちから這い上がった。2対3の1点ビハインドで迎えた9回2死3塁。
打者は千田光一郎で、2−2のカウント。佼成学園から見れば「あと1球」。
千田は追い込まれながらも高めの変化球を強振、その打球はセンターへ抜けていった。
土壇場で同点に追いつく値千金のタイムリー。
菅生の執念が呼び込んだ同点劇だった。
10回表は、8回から登板した藤井翔が最速147キロのストレートを武器に相手を封じ込める。
そして、運命の10回裏へ。
■2年生・堀町の殊勲サヨナラ打
10回裏、先頭打者の森下晴貴が四球を選ぶと、手堅く送って1死2塁。
2年生・堀町沖永が打席に立つ。
「自分が決める」。強い気持ちで振り抜くと、大空へ舞い上がった打球がセンターを越えていった。
その刹那、ベンチから一斉に選手が飛び出した。
2塁走者・森下が歓喜の中でホームを踏んで、劇的なサヨナラ勝ちを決めた。
堀町は「思い切りスイングできたので、抜けると思った。3年生のためにも勝ちたかった」と笑顔をみせた。
東海大菅生が執念の戦いで、西東京を制した。
■指揮官の喝で奮起した選手たち
コロナ禍で甲子園大会が消えた。
異例の代替大会、チームによっては3年生だけで戦うケースもあったが、若林弘泰監督は3年生を特別扱いせず、ましてや甘やかすこともなかった。
練習や試合でもいつもどおりに喝が飛んだ。
指揮官は「悔しかったら優勝してみろ」と言い放ち、奮起を促した。
玉置真虎主将は「甲子園がなくなって落ち込んだが、(監督の言葉で)一丸となれた。やってやろうと思っていた」と喜びをかみしめた。
若林監督は「大会は3年生だけのものではない。このチームとして勝つことを考えた。選手たちがよくやってくれたと思う」と話した。
指揮官と選手の信頼と絆が、西東京制覇の原動力だった。