ノーシードからの挑戦
不屈の野球を体現
星槎国際湘南がノーシードからベスト4入りを果たした。
準決勝・相洋戦では序盤にリードを許したが、じわじわと追い上げ、不屈の野球を体現した。
試合後、選手たちは笑顔でスタジアムをあとにした。
2020年10月号掲載
■コロナ禍で蓄えた力
コロナ禍で、星槎国際湘南の選手たちは力を蓄えていた。
そして、大会でその力を爆発させた。
2回戦で幸、3回戦で湘南工大附を下すと、4回戦では私学強豪・横浜隼人を7対4で撃破、準々決勝ではエース安達壮汰擁する桐光学園に4対0で完勝した。
百戦錬磨の名将・土屋恵三郎監督の采配は、大舞台でさらなる効力を発揮する。
ベンチの最前列に座る指揮官の声が、選手たちの背中を押していくのだ。
■序盤に大量失点も粘りの戦い
準決勝・相洋戦では2年生の右サイド小林匠が先発だった。
小林は初回を無難に切り抜けたが、2回2死からリズムを崩す。
相洋・鈴木心晴(3年=外野手)に3ランを浴びるなど大量7失点し、序盤で1対7という想定外の展開となった。
集中力が切れれば、早いイニングでのコールド負けの可能性がある中で、土屋監督は動じなかった。
「大丈夫、1点、1点、取っていけばいいんだ」。
指揮官の声がベンチに響いた。
3回には、佐野忍虎(2年=内野手)のタイムリー二塁打で2点を返すと、その裏にも2点を奪われたが、選手たちは食らいついていった。
5回には、中平颯馬(2年=内野手)の2点本塁打で5対9、ベンチは俄然盛り上がる。
7回には、佐野のタイムリーでさらに1点を返し、なおもチャンスが続いたが後続が断たれた。
9回も2死から中平の2塁打、岡村京亮(3年)の中前安打で好機を広げたが、あと一本が生まれずに6対9で試合終了となった。
■チームスローガンは「必笑」
チームスローガンは「必笑」。
選手たちは辛い練習も笑顔で乗り越え、大会で結果を残した。
濱田琉大主将(3年=内野手)は「素晴らしい仲間たちとともに、横浜スタジアムでプレーできてうれしかった」と清々しい表情をみせた。
無観客試合だったため球場に保護者はいなかったが、選手たちの魂はきっと届いた。
星槎国際湘南のノーシードからの挑戦は準決勝で終わりを告げた。
指揮官は「準決勝では勝てなかったが、強いチームに競り勝ってベスト4まで上がってきた。
コロナ禍の大会だったが、子どもたちは一人の人間として成長したと思う」と目を細めた。
全寮制で、野球に向き合う選手と土屋監督の絆は厚い。
その絆が、近い将来、このチームを甲子園へ導くことだろう。