山の子たちが切磋琢磨するチーム
春に大輪の花を咲かせるために
2016年夏ベスト4、2021年秋ベスト8という結果を残す茂木。「山の子魂」をスローガンに掲げるチームは確かな進化を遂げている。
■活気が戻るグラウンド
茨城との県境となる芳賀郡茂木町に位置する県立茂木。地域の応援を受けてグラウンドに立つチームは2016年夏にベスト4へ進出するなど町に勇気を届けてきた。だが、2018年秋には1・2年生選手が13人になるなど部員減少に直面してきた。将来的には連合チームになってしまう可能性もあったが、2017年秋に就任したOB指揮官・佐山浩行監督が「山の子魂」をスローガンに掲げて再出発。茂木、益子エリアを中心に1学年10人を越える選手たちが茂木のユニホームに袖を通す。2022年夏には3学年合わせて35人のチームとなるなど山あいの専用グラウンドには再び活気が戻っている。
■山間部のチームが価値ある戦い
2021年春2回戦では2年生左腕エース檜山匠海(現在3年=今春卒業で武蔵大へ入学)が作新学院相手に好投をみせて3対5の好勝負を演じた。さらに2021年秋にはベスト8へ進出した。2022年夏には左腕エース檜山が宇都宮短大附のエース中村拓馬(今春、栃木ゴールデンブレーブス入団)と投げ合いを演じている(1対2)。私学すう勢、公立の部員減少の流れの中で、茂木は価値ある戦いをみせている。卒業を控える檜山は「茂木でプレーしたことで多くを学ばせてもらった。将来はプロになって、地域の子供たちへ夢を届けたい」と話す。力を維持する新チームは2022年秋に2勝を挙げて3回戦へ進出。3回戦では青藍泰斗に力負けしたが、選手たちは打倒私学を目標にスケールアップを図る。
■下へ下へと根を伸ばせ
2023年夏へ向かうチームは、左腕エース水田柊(2年)が伸びのあるストレートとスラーブを武器にゲームを作る。右腕・永岡海音(2年)、左腕・皆川世昊(1年)、左腕・山崎智悠(2年)も力を伸ばし、投手陣は県屈指のレベルに到達する可能性を秘める。打撃は、秋大会2回戦・高根沢戦で推定120メートルの場外本塁打を放ったスラッガー仁平直斗(2年=外野手)がフルスイングをみせる。投打の柱が確立されてきたことで春・夏への期待は高まる。冬季はグラウンドの霜降によって練習メニューが限られるが、茂木は与えられた環境での成長を誓う。佐山監督は「何も咲かない冬の日は下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」という元三洋電機副社長後藤清一氏の言葉を生徒たちに伝えて、努力を促す。櫻井菜理主将(2年=内野手)は「環境を言い訳にせず出来ることをやって成長していく。山の子魂の言葉のもと、みんなで切磋琢磨していく」と春を待つ。「このチームには選手の数だけツボミがある」(佐山監督)。茂木町に春が訪れるころ、個性豊かな“花”がチームを彩っていく。