部員50人の公立高、限られた環境で創意工夫
2021年秋に県ベスト8進出で選抜21世紀枠県推薦
2021年秋に初の県ベスト8入りを果たした科学技術。50人の部員が揃う県立気鋭チームは、創意工夫で練習に励みながら夏の快進撃を目指す。(取材・栗山司)
■限られたスペースと時間の中で
部員50人。公立校の中では大所帯の部類に入るだろう。「ありがたいことに選手が集まってくれている」と就任6年目の森田重成監督は嬉しそうな表情で練習風景を眺める。 一方でグラウンドのスペースは限られている。サッカー部とラグビー部との併用となり、実際に野球部が使用できるのは内野とライト付近のみ。また、時間的な制約もあり、平日の練習は約2時間が限度となる。近隣の住民に配慮し、大声を張り上げてプレーすることもできない。限られたスペースと時間でいかにレベルアップをはかっていくか。工夫が求められている。
■テニスボールで打撃練習
練習はアップから始まり、続いてキャッチボール。選手たちは丁寧に1球1球を捕り、相手の胸に向かって投げ込む。主将の桑原聖(3年=外野手)に話を聞く。「毎回、必ずグローブの芯で捕ることを心掛けています。思い切ったノックができない分、キャッチボールが守備の基本になってくるので大事にしています」。 続いてバッティング練習。硬式球ではなく、テニスボールを黙々と打ち込む。当然、感覚的に異なる部分があるが、選手たちはメリットを挙げる。チームの主砲でもある桑原は「テニスボールの方が数を打つことができます」と話し、実際にスイングスピードを上げてきた。その時々で投手と打者の距離、球のスピードを変更。今、自分に必要なことを考えながら取り組んでいるのも特徴だ。 そして毎日、自らの課題に取り組む時間も作っている。「ただ指示を待って一生懸命にやるだけではなく、1日一回、たとえ30分でも考えて取り組む時間が大事だと思った」と森田監督。取り入れた当初はどんな練習をしたらいいのか戸惑っていた選手もいたが、今は定着。打つ、守る、走る。それぞれ自らの課題に向き合っている。
■戦力が充実して夏に向かう
前チームは秋の県大会で3勝を挙げ、初の県ベスト8進出。選抜大会21世紀枠の県推薦校に選出された。今チームもまずはベスト8が一つの目標だ。 昨年の秋、今年の春ともに中部大会の初戦で敗退。まだ公式戦で勝利を挙げることができていないものの、高い潜在能力を持っている。練習試合では東海大相模(神奈川)や常葉大菊川など強豪と対戦し、「全く太刀打ちできないわけではなかった」と桑原。森田監督も「打線は面白い。どんなチームとやってもそこそこは戦うことができる」と可能性を秘めたチームに期待を寄せる。
攻撃は4番打者の桑原を中心に破壊力があり、投手陣はタイプの違う投手を揃えて戦力は充実。夏の快進撃へ。力を蓄えて一気に駆け上がる。