【宇都宮】 「自律自治」

荒井退造顕彰活動から学ぶ選手たち
3月下旬には兵庫遠征で兵庫高と交流

 

 伝統校・宇都宮は文武両道を貫きながら甲子園を目指す。啓蒙活動にも取り組むチームは、甲子園の先にあるゴールを見据えていく。

■大先輩の生き方に学ぶ  

宇都宮は3月下旬に兵庫県遠征を行った。兵庫野球部との交流を図るもので、太平洋戦争末期の沖縄戦で県民の疎開政策に尽力した宇都宮OBの荒井退造元沖縄県警察部長、神戸市出身の島田叡元沖縄県知事の功績をしのび、意見交換をかわした。ふたりは20万人の命を救ったとされ、人命保護活動の最中に消息を絶っている。宇都宮の生徒たちは近年、荒井元沖縄県警察部長の顕彰活動に参加しながら歴史を学んできた中で、2019年に宇都宮対兵庫の交流試合を実施し、親交を深めていた。コロナ禍によって3年間中断し、今回は4年ぶりの開催。交流試合は雨で中止となったが、選手たちは学業や練習について情報交換し、夏の健闘を誓い合った。宇都宮の選手たちは、甲子園で開催されていた選抜大会を観戦し帰郷した。

■「瀧の原主義」の行動規範  

宇都宮には「瀧の原主義」という行動規範がある。「瀧の原」とは高校がある地名を指す。明治40年(1907年)、8代学校長・笹川臨風が書き残したもので、100年以上も受け継がれてきたこの言葉は、校内の石碑に刻み込まれている。また、野球部の練習場のベンチ内にも選手が筆書きしたものが掲示されている。「瀧の原主義とは何ぞ 瀧の原男児の本領を云う 瀧の原主義は人物を作らんとするにあり 剛健なる眞男子を作らんとするにあり〜」と綴(つづ)られている。荒井元沖縄県警察部長の原点は「瀧の原主義」の教えという。篠﨑淳監督は「勝利至上主義ではなく、甲子園の先にある人材育成を追求していく。その過程に甲子園がある。グラウンド内外での学びが勝利につながっていく」と話す。

■「自律自治」の精神  

3月の遠征を経て、ひと回り成長を遂げたチームは、引き締まる思いで残り約4カ月の高校野球へ挑む。チームは伊澤佑哉主将(3年=内野手)を絶対的な軸として投打に進化を遂げている。打線は、小島有生(3年=外野手)、鈴木茜丸(3年=外野手)の1・2番コンビでチャンスを演出し、伊澤主将、荒井慶斗(3年=内野手・投手)のクリーンアップで得点につなげていく。投手陣は、伊藤悠斗(3年)、荒井がゲームを作っていく。宇都宮は今年のチームからトップダウン方式をやめて、選手たちがメニューを考えて、練習に取り組んでいる。校訓の一つである「自律自治」を体現しながら野球と向き合う。伊澤主将は「練習だけではなく学校生活や啓蒙活動によって成長できている。宇都宮で学んできたことのすべてをぶつけて、夏に甲子園へ行きたい」と視線を上げる。選手たちは伝統を継承して新たな歴史を築いていく。

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