公立の矜持を胸に。
県下有数の進学校の挑戦
神奈川を代表する公立進学校・川和。
2015年秋にベスト8へ進出するなど実績を残すチームは、公立の矜持を胸に心技体の成長を目指している。
(取材・伊藤寿学)
■ 「何が足りなかったのか」
近年の神奈川大会で勝負強い戦いをみせてきた川和。
頭脳と技術を駆使したクレバーな戦いで、私学強豪相手に真っ向背負する姿には、高校野球の原点が垣間見える。
だが、2018年秋から4大会連続で県大会初戦敗退が続いている。
伊豆原真人監督は「勝てていないのは確かですが、結果だけでは判断できない。
チーム力がなかったわけではない」と語る。
そして「何が足りなかったのか、どうすれば勝てるのか、をしっかりと把握して、練習に落とし込むことが大切」と加える。
■ 選手をいかに育てるか
伊豆原監督は信州大大学院卒業後、一度は一般企業にSEとして入社したが、高校野球の指導者になるために退社。
神奈川高校野球界に飛び込んだ。
相模大野を経て、2013年に川和へ。
同年秋から指揮を執る。
2015年秋にベスト8へ進出するなど結果を残してきた。
あれから4年が過ぎたが、指揮官は時代の変化を肌で感じている。
私学すう勢の中で、これまでとは違うチーム運営が求められている。
入部してきた選手をいかに育てて、チームとしてどう戦うかに焦点を置いています」と明かす。
■ 公立のパイオニアへ
チームの刺激となったのは、昨夏の県大会でベスト4へ進出した相模原の存在だ。
公立のカリスマ佐相真澄監督率いる相模原は、県大会準々決勝で横浜を撃破し、周囲を驚かせた。
川和と相模原は、同じ公立進学校同士、練習試合などで交流があるという。
伊豆原監督は「素直にすごいと思いました。
『自分たちもやり方次第で勝てる』という勇気をもらった気がします」と話す。
そして「自分たちも『川和で野球がやりたい』と思ってもらえるような戦いをみせなければならない」と引き締める。
川和は、公立のパイオニアとなるべく鍛錬を積む。
■ 攻守のバランスが整うチーム
ひと冬を越えて、チームはひと回り成長した。
井上滉大主将(2年=内野手)を軸に、青山勝繁(2年=内野手)、廣瀬喜一(2年=内野手)、阿部海来(2年=内野手)、阿久津颯(2年=外野手)らが力を伸ばし、打線は厚みが増した。
ブルペンは、制球力抜群のエース左腕・富田航平(2年=投手)に加えて、身長188センチの大型右腕・中川達也(2年=投手)が135キロの直球とカーブに磨きをかける。
青山、廣瀬の二遊間は「川和で、私学強豪を倒すことに意味がある」と野心を秘める。
井上主将は「今年のチームは、一人ひとりの個性が強いが、攻守のバランスは整っている。
自分たちの代で結果を残したい」と、春夏へ向かう。
環境への言い訳はしない。
川和のスタイルで勝つことに意味がある。
神奈川県立川和高等学校
【学校紹介】
住 所:神奈川県横浜市都筑区川和町2226-1
創 立:1963年
甲子園:なし
野球部は学校創立とともに創部される。
校訓は「誠実 勤勉 質朴」。
神奈川県でも有数の進学校であり、部活動も盛んな文武両道の高校。
野球部OBに加藤幹典(元ヤクルト)。