【市ケ尾 野球部】「緊張感と楽しさの両立」

2018夏ベスト16の県立ダークホース。

「緊張感」と「楽しさ」が両立するグラウンド

近年、着々と力を伸ばす県立ダークホースの市ケ尾。

2018年夏の北神奈川大会ではベスト16、2019年秋には3回戦へ駒を進めた。

ここには野球が好きな選手たちが力を蓄える土壌がある。

2020年7月号掲載
(取材・伊藤寿学)

■ 普通の高校生がホームラン

一見、ごく一般的な県立チームだ。

選手の身長は決して高くなく、髪型も坊主ではないため、球児とは思えない選手もいる。

そんな選手たちだが、バッターボックスに立つと、表情が一変する。

そして、体全体を使った鋭いスイングで、迫力の打球を飛ばしていく。

2017年から市ケ尾の指揮を執る菅澤悠監督は「中学まで打球がまったく飛ばなかった選手が、高校2年半でしっかり練習すると、ホームランが打てるようになるんです」と話す。

菅澤監督、小林達也部長らのユニークかつ効果的な指導によって、選手たちは成長を遂げていく。

■ 昨秋は神奈川工に惜敗

2019年秋大会は2回戦で麻溝台を6対5で下すと、3回戦では神奈川工と対戦。

公立強豪に対して一歩も引かない戦いを演じると、8回を終えて8対5とリード。

だが9回に4失点して8対9の逆転負けを喫した。

金星こそ逃したが、春、夏に向けて大きな手応えをつかんでいた。

菅澤監督は「夏を経験した選手が少ない中で不安もあったが、選手たちが粘り強い戦いをみせてくれた」と目を細める。

中学時代に目立たなかった選手が、自信をつけて経験を積むことで、チームの貴重な戦力になっていく。

■ 選手全員が切磋琢磨


チームのキーワードの一つは「成幸(せいこう)」だ。グラウンドには「緊張感」と「楽しさ」が両立している。

選手たちは日々、野球を楽しみながら練習に励む。

今日よりも明日。選手全員が切磋琢磨する練習場には高校野球の新たな形が見えている。

今年のチームは、1月まで「全員キャプテン制」を採用。

選手たちの意識を高めた上で、和田泰輝(3年=捕手)がゲームキャプテン、池田一真(3年=外野手)がチームキャプテンの「ダブルキャプテン制」にした。

チームは、三木一真(3年=外野手)、長嶺太地(3年=内野手)、主戦・佐藤陸斗(3年=投手)らが中心だった。

和田、池田の二人は「個人の力があるチームではないが、元気と勇気はどこにも負けない」と胸を張る。

■ 最後まで野球を楽しむ


冬にフィジカル強化を図ったチームは、秋以上の結果を導くべく春・夏を待ったが、無情にも新型コロナウイルス感染拡大によって両大会ともに中止となった。

5月までの休校中は選手とのコミュニケーションもうまく取れない中で、指揮官、選手ともにそれぞれが「毎日自分自身最高」を求めた。

菅澤監督は「こういう状況になったのはだれのせいでもありません。

代替試合があるのであれば、みんなで思い切り楽しみたいと思います」と話す。

市ケ尾は最後まで笑顔で戦い抜く。


市ケ尾高等学校

【学校紹介】
住 所:神奈川県横浜市青葉区市ケ尾町1854
創 立:1974年
甲子園:夏1回
1974年に「高校百校新設計画」の一環として開校。「文武両道」がモットーで、男女バスケットボール部やダンス部は全国レベルの実力。生徒数は1100人を超え、県立高校では最大規模の学校のひとつ。

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