西東京屈指の右腕・森畑、散る
準々決勝、涙のゲームセット
創価が準決勝で東海大菅生に屈した。
河合圭聖主将を軸にしたチーム、そして最速146キロ右腕エース森畑侑大の最後の夏が終わった。
2020年9月号掲載
■孤高の背番号1
エースが力尽きた。
初回に東海大菅生の4番・杉崎成の先制打から3点を奪われた後、2回から背番号1の森畑侑大がマウンドに上がった。
だが、3回に杉崎にこの日2本目のタイムリーを許すと、5回、6回と立て続けに失点。
そして今大会の規定の2時間20分が迫った8回裏には4連打を浴びて一挙5失点。
「ストレートが内側に入ってしまった。失投を逃してくれなかった」。
5対12。ゲームセットが告げられると、全身の力が抜けると同時に、目から涙が溢れ出た
昨夏に12年ぶりの決勝進出を果たした創価。
その原動力になったのが森畑だった。
身長184センチ、83キロの堂々たる体躯。
そこから繰り出す最速146キロの伸びのある直球。
今世代の東京ナンバーワン右腕とも称された。
新チームとなった昨秋は準決勝で帝京にサヨナラ負け。
その悔しさを胸に、冬場には体重増に励み、コロナ禍での全国一斉休校となった際には寮を出て帰省を強いられたが、実家近くの多摩川の河川敷で黙々と坂道ダッシュを繰り返して足腰を鍛え抜いた。
今夏、チームは4回戦・工学院大附戦を8対7(大会時間規定8回終了)で競り勝つと、準々決勝・世田谷学園戦では12対1と圧勝、弾みをつけて準決勝へ挑んだ。
しかし、この日は東海大菅生打線が一枚上手。
6回1/3を投げて9安打4四球で計9点を失い、「森畑がここまで打ち込まれたことはなかった。
この暑さと連戦の中で、コンディション面でうまく調整できなかったかな」と片桐哲郎監督も肩を落とした。
■コロナ禍で努力を続けた選手たち
だが、チームとしてただ黙って敗れた訳ではない。
エースが苦しむ中、5回に1番・島本 康平、2番・高沢春佑の連打で2点を返すと、6回には今大会絶好調の6番・石田清がレフトへ特大アーチと島本のこの日2本目のタイムリーで計2点。
7回にも7番・小松稜平のタイムリーで1点を返した。
「粘り強いバッティングでよく追い上げてくれた。特に石田が打って、チームに勢いを付けてくれた」と片桐監督。
新チーム発足時は控えだった石田だが、「ずっと努力を続けて、この舞台で勝負強いバッティングができる選手までに成長したというのは私自身も嬉しい。
後輩たちも感じるものがあるはず」と目を細めた。
試合終了直後は涙を流した森畑も、「最高のメンバーで優勝したかったので悔しかったですけど、悔いはないです」と力強く前を向いた。
片桐監督は「自分たちのやって来たことに誇りを持って、人生の甲子園を目指して、自分らしい道を歩んでもらいたい」と、引退する3年生たちへ向けてエールを送る。
そう、この夏が、その涙が、また新たなスタート地点になる。