9回裏に追いつかれ、延長戦で涙
後輩たちに託す「次の夢」
関東一が決勝で帝京に敗れて、準優勝となった。
東東京制覇まであと2アウト。しかし、その2つが取れなかった。
2020年9月号掲載
■領家、今村の継投で9回へ
エース左腕・今村拓哉の投球には風格が漂っていた。
関東一は、右腕・領家佑馬が先発し4回1失点。
重政拓夢のタイムリー二塁打などで2対1とリードし、エースに託した。
5回からマウンドに上がった今村は重いストレートと変化球のコンビネーションで帝京打線を完全に封じていく。
5回から8回まで1本のヒットも許さずに、1点リードのまま9回を迎えた。
今村は、先頭を内野ゴロに打ち取り、あと2アウト。
関東一の夏2連覇が見えてきたが、続く打者に四球を与えると、エンドランを決められて1死1・3塁。
次の打者への初球、3塁ランナーが走り、捕手・渡邊貴斗がピッチアウトで立ち上がるが、回避できずにスクイズを決められた。
■激闘は2対2のスコアで延長戦へ
東東京の優勝旗を懸けた激闘は2対2のスコアで延長戦へ突入した。
関東一は延長10回から2年生・市川祐を起用する。将来性あふれる大型右腕は、持ち前のストレートを投げ込み、10回をしのぐ。
打線が援護したかったが、帝京・武者倫太郎の気迫の投球に対してチャンスを作ることができない。
11回裏、市川は1死2塁のピンチを迎えると、4番を申告敬遠し、5番・新垣煕博と勝負するが、渾身の3球目が左翼フェンス直撃の2塁打となり、無念のサヨナラ負けとなった。
米沢貴光監督は「3年生の今村をそのまま投げさせるか、市川に替えるかは葛藤があった」と悔やんだ。
夏2連覇を狙った関東一の夢は、帝京に阻まれる結果となった。
■涙のベンチ、この悔しさを忘れない
試合後、関東一の選手たちは、ベンチ前で肩を震わせた。
主将・渡邊は地面に突っ伏して、悔しさをあらわにした。
そして今村、市川ら投手陣は、涙を止めることができなかった。
彼らの姿には、代替大会に懸ける気持ちが伝わってきた。
リードオフマン重政は「甲子園がなくなっても、応援してくれる人たちのために優勝したかった」と悔しさを飲み込んだ。
渡邊主将は「ベンチに入れなかった3年生に申し訳ない。3年生をはじめチーム全員に感謝したい」と話した。
関東一の連覇は消えた。
だが、先輩たちの意志を継ぐ後輩たちが、甲子園への道をつないでいく。