【栃木工 野球部】「勝つ!勝つ!勝つ!」#栃木工

監督と共に戦う「最後の夏」
エース石川、生沼主将を軸に投打充実

2019年春の県準優勝となった公立実力校・栃木工。要所で作新学院を倒すなど強豪キラーでもある。投打の戦力が整う今年度のチームは、特別な思いで「最後の夏」へ向かう。

■あと一歩を追求するチーム

勝たなければいけない理由がある。長きにわたりチームを指揮した日向野久男監督が今年60歳を迎える。まだ来年度のことは何も決まっておらず、再任用でチームに残る可能性も十分にあるが、今年が「区切り」のシーズンであることは確か。日向野監督は「25年以上も戦ってきましたが、甲子園に行くことができていません。あと一歩、あと一歩と言ってもらいながら甲子園へ行けていないのは何かが足りなかったから。今年は、選手と一緒に『あと一歩』を追求しています」と朗らかな表情をみせる。

指揮官が掲げた今季のスローガンは「勝つ!勝つ!勝つ!」。この言葉に、すべての思いが込められている。

■困難を乗り越えて夏へ

今年の3年生は、苦労の代だった。1年生だった2019年秋には、台風被害で学校やグラウンドが浸水し、復旧作業に追われた。2020年春には、新型コロナウイルス感染拡大によって学校が休校となり、練習も制限された。そんな状況でも、選手は心をひとつに成長を遂げていった。昨年の秋季県大会は、チームの戦力が整わずに2回戦で小山に3対9で敗れた。冬のトレーニングを経て、選手たちは各自がスケールアップ。秋にマウンドに立てなかったエース石川晃誠が復活。力をたくわえたチームは、春予選で佐野松桜に勝利して本大会へ。1回戦の宇都宮工戦は、エース石川の好投によってゲーム終盤までスコアレス。終盤に自分たちのミス絡みでリズムを崩して0対3で屈したが、夏に向けて確かな手応えを得た。

■エース軸に守備からリズム

士気高まるチームは、攻守の要である生沼令大主将(3年=内野手)を軸に、結束を高めている。エース石川は春季大会以降の練習試合で、強豪校相手に2ケタ奪三振完投勝利を上げるなど夏へギアを上げている。最速141キロのポテンシャルは未知で、今夏の注目プレーヤーだ。打撃では、クラッチヒッター五月女遥翔(3年=外野手)、大型スラッガー野代陽友(3年=内野手)、2年生の佐藤憧英もパワーを秘めている。栃木工は、投打の歯車が噛み合い始めている。

生沼主将は「ピッチャーの軸が確立されたことでチームは変わってきました。守備でリズムをつくってチャンスで奪い切る戦いで、夏の優勝を狙います。今年は日向野先生の“区切りの大会”でもあるので、感謝を伝える意味でも胴上げしたいと思っています」と気持ちを高める。日向野監督と選手にとっての特別な夏が始まろうとしている。

 

(2021年7月号掲載)

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