【昭和一学園】 「人づくり」

「人間的成長なくして技術的進歩なし」
故野村克也氏の参謀が伝える野球の魅力

 昭和一学園は、2021年夏の西東京大会でベスト16へ進出するなど力を誇示している。チーム作りの根本にあるのは「人づくり」の精神だ。

■秋は一次予選で悔しい敗戦  

昭和一学園は、2013年、2021年の西東京大会でベスト16に進出した実績を持つ。個性豊かな選手たちが力を発揮することでチームの価値を高めてきた。近年は都内強豪と互角の争いを演じてきたチームだが、今季のチームは苦しんでいた。新チーム始動後の練習試合では、自分たちのプレーができずになかなか勝てなかったという。そして秋大会は一次予選初戦で、プロ注目の投手・中村海斗擁する明大中野に1対8で敗れて、“長い冬”となった。峯岸勇気主将(2年=内野手)は「秋予選敗退は対戦相手の問題ではなく自分たちの問題。投打の力が足りなかった」と振り返る。自分たちの現在地を把握した選手たちは危機感を持って練習に励む。

■人づくりにフォーカスしてチーム再生  

2014年秋からチームを指揮する田中善則監督は、社会人シダックス時代に野村克也監督(故)のもとでヘッドコーチを務めた。「野村の教え」を受けた指揮官は、自らの経験を生徒たちに還元することで選手育成を図ってきた。今秋の予選敗退を受けて、もう一度、原点に立ち戻ったという。「野村の教え」の一つに、「チームづくりは人づくり」という言葉がある。田中監督は「チームは個人の集合体。野球の技術も大切だが、人の部分が成長しなければ技術はついてこない。人づくりにフォーカスしてチーム再生に取り掛かっている」と語る。指揮官は、日々のミーティングで野村氏の言葉や教えを、選手に伝えて人間的な成長を促す。選手たちは、言葉の一つひとつを野球ノートにメモして、自身に刻み付けていく。「人間的成長なくして技術的進歩なし」。昭和一学園は、人をつくることで、チームの土台を築き上げていく。

■チームとして一つになって戦う  

原点に戻った昭和一学園は、秋予選以降、選手、チームに変化の兆しがみえてきている。投手陣は、身長185センチ90キロの大型右腕・森川歩(2年)、サウスポー丸山侑真(2年)が球質を上げてきた。打撃陣は、峯岸主将をはじめ、クラッチヒッター大西陽(2年=外野手)、石ケ森啓太(2年=内野手)、藤原諒介(2年=外野手・投手)らタイプの違う打者が打線にアクセントをつけていく。チームは守備をベースにして、チャンスで畳み掛ける戦いを目指す。エース森川が「秋の悔しさを糧に春・夏は勝ち切るチームになりたい」と話せば、峯岸主将は「仲間を支えるなどグラウンド外の人間的な部分も大事にして、チームとして一つになって戦っていく」と巻き返しを誓う。「人づくり」は、自分自身との戦いだ。

 

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