【実践学園 野球部】「ONE」#実践学園

先輩たちが戦った特別な夏

自分たちの代でさらなる進化を証明する

近年、メキメキと力をつけてきた実践学園。

24年ぶりにベスト8まで勝ち上がった今夏の経験と思いを受け継ぎ、期待の2年生たちが新たな戦いをスタートさせた。

2020年度10月号掲載

(取材・三和直樹)

■コロナ禍を戦い抜いた3年生たち

特別な夏だった。

コロナ禍による休校、活動自粛から甲子園大会中止と異例の事態が続いた中、東京都の代替大会で4勝を挙げて同校24年ぶりの夏ベスト8入り。

そのうち2試合が2対0の接戦。

チーム一丸でピンチを凌ぎ、粘り強い戦いで、目標に掲げていた「3年生全員ベンチ入り」を見事に達成した。

8月13日には引退試合も実施。

3年生たちは達成感と充実感を持ってユニフォームを脱ぐことができた。

その3年生たちから刺繍の名前入り特注グローブをサプライズプレゼントされた沢里優監督は、「もう10年以上も使っていてボロボロだったからかな」と苦笑いも、「生徒たちと信頼関係を築くためには時間が足りないと思って夏の大会に臨んだけれど、目の前の一つ一つの試合に勝つごとに信頼関係が生まれていった。今年はいろいろと大変でしたから、余計に嬉しかったですね」と感謝。

「土壇場で底力を見せたから勝ち上がれた。持っている力以上のものを発揮できたと思う」と、心身ともに過酷だった夏を力強く戦い抜いた3年生たちを、改めて讃えた。

■早期スタートと充実の戦力

そして、彼らの魂を受け継ぐのが、今夏の戦いをスタンドから見ていた下級生たちだ。

特に2年生に関しては「個の力は3年生よりも上」と沢里監督は語る。

春の時点ではレギュラーの9人中5人が2年生。

今夏は監督の意向で「3年生のみ」で戦う代わりに、新チームを例年よりも早くスタートさせた。

夏の甲子園大会中止が発表されたのが5月20日。

その翌日には主将、副主将、各部門のリーダーを決め、3年生とは別に新体制でのチーム作りを進めている。

戦力も整っている。

主戦投手は「常に有利なカウントを作れる。テンポが良くて、守りから試合の流れを引き寄せることができる」と沢里監督が評する右サイドスローの菅沼麟太郎(2年)。

加えて、「どこのチームが相手でも自分のピッチングをできるようになって、安心して見ていられるようになった」(沢里監督)という入江颯桃(2年)がスプリットを武器に絶賛成長中。

この2枚の投手を中心に守備からリズムを作り、攻撃面では後藤明日(2年=外野手)、坂倉大地(2年=外野手)の俊足巧打の1、2番の後に3番・矢作将也(2年=外野手)が抜群の勝負強さを発揮し、4番には頼れる主将・吉村昇摩(2年=内野手)が座る。

チーム全員で繋ぐバッティングで1点をもぎとるのがチームの形だ。

目の前の結果、甲子園にこだわることなく、5年後、10年後の先を見据えた指導が沢里監督のモットーだが、「夏に我慢した分、その気持ちをこの秋からぶつけて、甲子園に行くような学校と10回やれば5回勝てるぐらいの力を持ったチームになってもらいたい。力も経験もある子が多い。練習試合でもいい戦いができていますし、私が見た中では一番力がある代だと思います」と今までにない高い期待を寄せている。

■再びチーム一丸となって

その期待を受け、選手たちも気迫にあふれている。

菅沼が「(新チームは)打線がいいし、守っている時も野手がすごく声をかけてくれる。その中で自分は絶対的エースを目指したい」と拳を握れば、「先輩たちがいい結果を残してくれた。あの戦いを引き継いで、僕と菅沼の2人で引っ張っていきたい」と入江。

そして主将の吉村は、「チーム全員が一丸になれれば、すごい力を発揮できる。そのことはみんなわかっている。自分がキャプテンとしてどれだけまとめられるか。先陣を切ってチームを引っ張っていきたい」と日に焼けた額の汗を拭いながら言葉に力を込める。

今夏の経験と新チームへの手応え。

その2つを手にした沢里監督は「新チームの合言葉は、『ONE』です。ナンバーワンを目指したいチームですし、オンリーワンのチームになってもらいたい。1球目、1アウト目、すべてにおいてONEを大切にして、みんながチームのために戦う“ONE TEAM”になってもらいたい」と言う。

ここ数年、確実に東東京大会の上位に顔を出すようになった実践学園。

飛躍への準備はすでに整った。

特別な夏を終え、新時代の幕開けを告げる勝負の1年が始まっている。

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