新球場から目指す聖地
昨秋の敗戦を乗り越えて

 昨年6月に待望の新グラウンド「向上令和グラウンド」が完成した向上。これまで限られたスペースで練習を積んできた選手たちは、広大な新グラウンドから甲子園を目指す。

(2021年3月号掲載)

■両翼95M中堅120Mの新球場  

2014年夏の神奈川大会で準優勝、2019年春・夏にベスト8へ進出するなど激戦区・神奈川で確かな実績を残してきた向上。

県下屈指の部員数を誇る人気校だが、校庭が限られていたことから内野ダイヤモンドほどのスペースで練習に励んできた。そんなチームに昨年6月、待望の新グラウンドが完成した。横浜スタジアムをイメージした人工芝、アンツーカーが敷かれた球場は、両翼95メートル・センター120メートルの広さ。ホーム裏には100席以上の観客スタンドがあり、ナイター照明も完備。さらに屋外ブルペンが5か所あり、投手の練習環境も充実。球場内のブルペンを使用すると、同時に7人の投手が投げることができる。全国屈指の環境が整ったと言える。

打撃リーダーの直理善也(2年=外野手)は「これまではケージでの打撃練習だったが、新グランドでは思いきり打つことができて飛距離も把握できる。環境を整えてもらったので責任を持って練習に取り組んでいます」と話す。

■昨秋は悔しい敗戦でベスト16  

昨年の夏は、コロナ禍で甲子園大会が中止となったため、今季は新グラウンドから、甲子園を狙う最初のチームとなる。

昨年の秋季大会は県大会1回戦で星槎国際湘南と対戦した。相手は昨夏ベスト4で主力選手の多くが残っていた。向上の選手たちは、星槎国際湘南の夏の試合を分析しゲームへ挑むと、延長10回の激戦を制して5対4で勝利した。2回戦では生田東を6対0で下して3回戦へ。ベスト8入りをかけた戦いの相手は相洋。9回表まで7対2とリードしてきたが最終回にまさかの6失点を喫してサヨナラ負けとなった。

赤嶺大翔主将(2年=内野手)は「最終回に球際の弱さ、自分たちの甘さが出てしまった」と振り返る。選手たちは、新グラウンドから新たなスタートを切った。

■投打の戦力整うチーム  

秋ベスト16となったチームだが、投打の戦力は整っている。

エース猿山広輝(2年=投手)は最速138キロのストレートを強気に投げ込む本格派。冬のトレーニングでパワーアップしていて春・夏は140キロ以上のボールを投げ込むことだろう。エース猿山に続く、小林夏輝(2年)、佐藤諒音 (1年)も力を伸ばす。気鋭の投手陣を、扇の要・篠木瞭吾(2年=捕手)のリードでまとめていく。打撃は、リードオフマン直理が切込隊長となり、身長182センチの主砲・板倉大志(2年=外野手)へつなぐ。

今季の向上は、サイズでも負けていない。エース猿山は「僕たち投手陣でゲームを作って、チームを引っ張っていく」と気持ちを高める。赤嶺主将は「グラウンドが広くなったからといって、自然に強くなれるわけではありません。狭い練習場のときと同じように効率良く練習をして、チームの力を高めていきたい」と引き締める。

頼るのはグラウンドではなく己だ。選手たちは、この瞬間を大切にしながら練習に励む。新グラウンドに優勝旗を持ち帰るための戦いは、すでに始まっている。

 

 

 

 

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