【横浜翠陵】  「GRIT〜やり抜く力〜」

「闘志」「粘り強さ」「自発」「執念」が軸
過去を越えて新たな未来へ

 

2011年の共学化によって野球部が始動した横浜翠陵。「GRIT〜やり抜く力〜」を部訓に掲げるチームは、過去最高の3回戦を越えて、その先へ向かっていく。

■40人規模のチームへ成長

横浜翠陵は、一歩ずつ階段を登っている。「ガッツ(闘志)」、「レジリエンス(粘り強さ)」、「イニシアチブ(自発)」、「テナシティ(執念)」の頭文字を取った造語『GRIT(グリット)〜やり抜く力〜』が部訓だ。米国著名心理学教授の言葉で、同教授の著書を読んだ田中慎哉監督が、チームに取り入れ、人としての強さを選手に求めた。2017年から指揮を執る田中監督は、神奈川県出身で高校時代は強豪・東海大山形でプレーし甲子園出場を経験。横浜翠陵コーチを経て監督を任された。夏大会初参加の2013年から2017年までの公式戦勝利は2勝のみ。当初は実績のないチームだったが信頼を得ることによって、今夏は3学年合わせて約40人の規模となった。横浜翠陵の旗印のもとに部員が集まり、2022年秋には藤嶺藤沢に善戦するなど私学強豪相手に接戦を演じるまでに進化した。

■地下足袋を履いての練習で足腰強化

今夏は1回戦で中大横浜に勝利し夏3年ぶりの勝利。2回戦では創学館に敗れて夏を終えたが、3年生たちの想いは、1・2年生計26人に引き継がれた。阿部遙輝主将(2年=捕手)、成田立樹副将(2年=内野手)を軸とするチームは、それぞれが意志を持ち、チームとしての一体感を大切にしている。学校校庭練習では、スパイクではなく足腰強化のため地下足袋を履いて練習に励む。成田副将は「足袋での練習は、足の指先に力を入れる必要がある。足の指で地面をつかむことで打撃強化につながっている」と話す。今秋予選では2勝1敗で予選突破。秋県大会では1回戦で鶴見大附と対戦し惜敗となったが、士気は下がっていない。チームの大会最高成績は3回戦。選手たちは、3回戦を越えてベスト8到達を目標に掲げている。阿部主将は「私学強豪を倒してさらに上へ行きたい」と力を込める。

■努力を受け入れる“土壌”

横浜翠陵の選手たちは、野球を通じて成長している。秋県大会を控えた直前の紅白戦で、高校から本格的に野球を始めた1年生プレーヤーが勝負所でタイムリーを放った。その瞬間、チームメイトたちが一斉に立ち上がって喜びを共有し、声を掛けた。そのシーンを見ていた田中監督は「選手の成長をみんなで祝福できるチーム。それがうちの良さだと思います」と微笑んだ。野球未経験の髙栁依奈(2年=マネージャー)は、ノックの練習を積み、試合前練習でノックを任されるまでになった。横浜翠陵のグラウンドには努力を受け入れる“土壌”がある。野球の技術はもちろん大事だが、粘り強く“やり抜く”姿勢が、選手を大きく成長させる。指揮官就任8年目、「GRIT」はチームに着実に根付いている。選手たちが情熱を持って、戦い続ける限り、結果は必ずついてくる。今シーズン、横浜翠陵は過去を超えて、新たな未来を創り出す。

 

おすすめの記事