春夏12回の甲子園出場を誇る名門
打撃力を武器に目指す聖地
昨年夏、秋ともに甲子園まであと一歩に迫った文星芸大附。
先輩たちの悔し涙をみてきた新チームの選手たちは、甲子園への強い思いをグラウンドで表現していく。
2020年度10月号掲載
(取材・永島一顕)
■甲子園の夢まであと一歩
文星芸大附は、髙根澤力監督が主将で四番・捕手としてチームをけん引していた宇都宮学園時代の1991年、春夏連続で甲子園出場を果たしている。
当時のチームは、県内で群を抜く力を見せ、全国大会でも注目チームの一つだった。
この年を含め、春夏12回の甲子園出場を誇る名門も、2007年を最後に全国の舞台からは遠ざかっている。
髙根澤監督が2018年9月に就任した後、2019年夏には県大会決勝まで駒を進めながら作新学院の9連覇を阻めず、続く秋季県大会では準優勝して関東大会に出場したものの初戦敗退。
昨夏、昨秋ともに甲子園の夢をつかむには一歩届かない状態で終戦となった。
■交流戦2試合で計40得点
新チームには、佐藤真也主将(2年=外野手)を筆頭に先輩たちの悔しさを目の当たりにしたメンバーが多数いる。
それだけに、始動間もない新チームには「先輩たちが果たせなかった夢を実現しよう」との思いが強く、「何が何でも甲子園に行かなくてはいけない」と佐藤主将。
初の実戦とも言える8月の交流戦では、矢板中央、今市工との2戦で40得点と驚異の攻撃力を披露、佐藤主将は「自分たちは打のチーム。つなぐ打撃ができ良いスタートを切れた」と芽生えた自信を表した。
プレーを見守った髙根澤監督も「アグレッシブな姿勢を発揮してくれた」と高評価を与えた。
■聖地への強い思い
ただ、課題が無いわけではない。
守備面で不安を実感した佐藤主将は「ベースカバー時などでお互いに声掛けし、スキのないプレーをしっかりと身につけないといけない」とチーム現状に目を向ける。
「人任せのプレーが見られる」と断じる髙根澤監督が、取材時の練習試合後のミーティングで叱咤する姿は印象的で、「準備がきっちりできないとゲームにも出てしまう。練習も本番に近い気持ちで臨み、人任せにしないプレーをきちんと身につけてほしい」と選手一人ひとりに精神面での成長を期待する。
新型コロナ禍の影響から、「例年通りの練習ができず、特に基礎体力の不十分さに選手も不安を抱えている」(髙根澤監督)と心配を抱えてはいるが、今季の文星芸大附は、これまでにも増して「甲子園出場」への思いが強いことは確か。
佐藤主将は「一戦必勝で目の前の相手に向かい、どんな相手でも圧倒するような試合をしたい」と秋季大会への強い意気込みを言葉にした。
文星芸大附は2007年夏以来の甲子園を目指して、突っ走る。