【浜松開誠館】「この試合が全て」(2023年夏)

決勝は18安打炸裂の猛攻
全員で掴んだ悲願の初甲子園切符

 

第105回高校野球選手権記念静岡大会は、浜松開誠館が初優勝を遂げ幕を閉じた。 (取材・栗山司)

■エースの決意

決勝戦の前日、佐野心監督から先発を言い渡されたエースは「やってやるぞ」と気持ちが高ぶった。  最速149キロ右腕の近藤愛斗(3年)は不調に苦しんでいた。準決勝までの登板はすべてリリーフ。準決勝では2者連続の四球にタイムリーを浴びて降板。「自分は背番号1なのに何をやっているんだろうという気持ちになりました」。  決勝戦は「悔いを残したくなかった」と一番の武器のストレートで勝負することを決意した。立ち上がりから、力強いストレートを投げ込んだ。球速は常時140キロ台前半から中盤を計測した。7回まで4失点。8回には佐野監督から交代を促されたが、首を振って続投を志願した。そして9回、最後はフォークボールで三振を奪うと、渾身のガッツポーズを作った。

■本来の力を取り戻す

今大会の浜松開誠館は決して楽なスタートではなかった。初戦は2対1で辛勝。3回戦と4回戦も勝ったものの、本来のポテンシャルを発揮できていなかった。「最初の3試合は0点にも達していないマイナスだった」と指揮官は振り返る。「この試合で最後だっていう気持ちになっていなかった。ミーティングでかなり長い時間をかけて『この試合が全てなんだよ』と伝えていった」。  スイッチの入った準々決勝では計13安打を放ってコールド勝ち。準決勝は終盤に一時逆転されたが、9回裏に新妻恭介(3年=捕手)のタイムリーでサヨナラ勝ちを飾った。

■全員で勝ち取った勝利

決勝戦でも猛打が爆発した。「目が違っていた。いい表情をしていた」と佐野監督。初先発の近藤を援護しようと、初回に加藤蔵乃介(内野手=2年)のタイムリーで先制すると、2回には深谷哲平(3年=外野手)のタイムリーで加点。準決勝まで、わずか1安打だった吉松礼翔主将(3年=内野手)にもタイムリーが出て、チームが勢いづいた。  初のベスト8進出から夏の頂点へ。吉松主将は「チームメート全員で勝ち取った勝利だと思います」と誇らしげな表情を浮かべた。

 

 

 

 

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