元プロ・芦沢真矢監督就任5年目。「人間力」をベースに着々進化
今夏の西東京大会3回戦で佼成学園を下すなどチーム力を伸ばす啓明学園。
元プロ野球選手・芦沢真矢監督の就任から5年が経過、チームは「人間力」をベースに進化を遂げている。
(取材・伊藤寿学)
■ 一瞬一瞬の積み重ねが大切
啓明学園のチームスローガンは「一瞬懸命」。
選手たちは、指揮官直筆の四文字が背中にデザインされたトレーニングシャツを着込んで日々の練習に励む。
芦沢監督は高校卒業後の1976年に、捕手としてドラフト5位でヤクルト入り。
1988年に現役引退し広島コーチ、独立リーグ監督、横浜コーチなどを務めていた。
コーチを離れたときは一般企業に就職し社会を学んだ。
野球、社会での豊富な経験が評価されて2015年に啓明学園から声がかかった。
チーム改革、そして選手の人間形成に乗り出した指揮官は、独立リーグ時代に大切にした言葉「一瞬懸命」を掲げ、チーム強化、そして選手の人間育成を図った。
「野球も人生も一瞬一瞬の積み重ねが未来へつながっていく」(芦沢監督)。
新たなスタートとなった啓明学園は2017年夏に4年ぶりの勝利を上げるなど変化の兆しをみせていた。
■ ミスを恐れずにチャレンジ
啓明学園の校名をさらに轟かせたのは、今夏(2019年)だった。
西東京大会3回戦で強豪・佼成学園と対戦すると8回表まで6対5で食らいつく。
そして8回裏に一挙4点を奪い逆転勝利、4回戦では明星に敗れたが堂々たる戦いをみせた。
芦沢監督は「3年生たちが必死な姿勢で戦ってくれて、苦しい展開になってもだれもあきらめなかった。
彼らは、野球ではなく人間的な成長を最後の大会で表現してくれたと思う」と、引退した3年生を称える。
今季の新チームは、3年生の好成績を受けて次なるスタートを切った。
現2年生の実戦経験が乏しいことは否めない。
始動直後の練習試合では連戦連敗。
オープン戦16試合で、100以上の四死球、60以上の失策を喫した。
だが、指揮官は叱らなかった。
「プレーの失敗は、プロ野球選手でもあること。
大事なのはミスを恐れずにチャレンジすることだ」(芦沢監督)。
1・2年生たちは、失敗を糧に大きく成長した。
■ 秋は悔しい敗戦。
春、夏へ一致団結
秋季大会予選ブロック1回戦は、甲子園出場経験を持つ世田谷学園となった。
大塚優璃(2年=投手)、芦澤光陽(2年=捕手)のバッテリーを軸にゲームに向かった啓明学園は、一丸となった戦いをみせて8回までスコアレスで最終回を迎えた。
しかし、9回裏にサヨナラ本塁打を浴びて0対1の惜敗。
選手たちは「一球の怖さ」を味わった。
予選で敗れたチームだが、佐藤光主将(2年=内野手)を中心にポテンシャルは高い。
大塚、芦澤のバッテリーに加えて、相原史典(2年=内野手)、菊池啓太(2年=外野手)、守屋墨人(2年=外野手)らが核となる。
1年生投手の巌琉翔、赤追寛太も力を伸ばし、春、夏へ士気は高まっている。
新チームでは、練習メニューを選手たちで考えるなど自主性を促されている。
佐藤主将は「始動のときは東京で一番弱いチームだったと思うが、そこから成長できている。
秋は予選で負けてしまったが、ここからが勝負。
一瞬を大切にして、チームに足りないことを自分たちで考えながら春、夏へ向かっていきたい」と前を向く。
啓明学園は、「一瞬」と「人間力」を両輪にして、野球と人生の「2つのトーナメント」を駆け上がっていく。
啓明学園高等学校
【学校紹介】
住 所:東京都昭島市拝島町5-11-15
創 立:1940年
甲子園:なし
帰国子女の教育機関として生まれた学園で国際教育に力を入れる。
野球部は2015年に元プロ選手の芦沢真矢監督を招へいし、チーム強化を図っている。